鳥とめもないメモ帳

3歩歩いても忘れないために

「センス入門」を読んで

「センス」とは何かをうっすら考えている時にこの本を書店で見つけたので、買ってみました。

センス入門

センス入門

 

 

 

著者は「暮らしの手帖」の編集長

この本を読み進めて、しばらくして著者が「暮らしの手帖」の編集長だと分かりました。恥ずかしながらお名前を存じ上げなかったのですが、それを知って、なるほどと思ったものです。「暮らしの手帖」は読んだことはないけれど、その企画が面白いというツイートは見たことがあります。最近編集長になったようで、いわゆる商品テスト企画には関わっていなかったようですが、その血を引く雑誌の編集長ということもあり、全体を通して言葉に重みがあるように感じました(ハロー効果だろうかとも思ったけれど、たぶんそんなものではないと思う)。

本の内容はというと、タイトルとは裏腹に、センスに関するエッセイ集といった内容です。ところどころに興味深い考え方が出てきますが、そのどれも僕が普段から考えていることにとても近く、共感しながらサクサクと読み進めることができました。この人は僕と思考のパターンが似ているなとさえ思ってしまったほどです(全然手の届かない、雲の上の人物であるはずなのに)。

というわけで、紹介したい箇所は多々あるけれど、その中でも僕が特に共感した箇所について書いていきたいと思います。

他人のオススメはなんでも試してみる

いいと言われているものは、偏見を持たずに必ず試してみる、H先生のそういうところが素晴らしいと思うのです(p51)

筆者がある料理研究家H先生に、美味しいお店を教えてくれと言われて、筆者行きつけの(H先生には似合わないような)庶民的なお店を教えた時のエピソードだ。H先生は教えてもらった庶民的なお店に、実際に足を運んで、後日筆者にその率直な感想を伝えてくれたという(曰く、口に合わなかったと(笑))。

このエピソードので筆者が伝えたかったことは、人がいいとオススメしていることを実際に体験してみようというH先生のその考え方の凄さである。これこそがセンスの源泉であると。

本書の冒頭でも

そして、この人たちに共通しているのは、何が情報であるのかということを正しく知っているということです。(中略)経験したことをはっきり自分の言葉で言える、これが情報というものであり、たまたま見たり聞きかじったりしたことは自分にとっては情報ではない、と思っているのです(p15)

と、実際に見聞き、体験することの大切さを繰り返し説いています。これに僕は大きな共感を覚えたのです。

そして、その経験には失敗が含まれていてもいい、むしろ失敗こそがセンスの源泉であるとはっきりと言い切っています。成功ばかりだと、それが普通になってしまい、感動が薄れてしまう。無感動の状態ではセンスのいい人にはなれないだろうと。これはまったくその通りだなあと思ったわけです。

情報の辿り方が僕と似ている

たとえば、随筆を読んでみると、「あっ、マチスの画集を手元に置いていたんだ」と膝を乗り出すようなことが書いてあるのを見つけて、「きっとマチスを毎日見ていたんだ」とわかります。そうすると、自分もマチスの絵をきちんと見てみよう、となっていきます。マチスが素敵だなと思えば、今度は、マチスは何を読んで、何を見ていたのかな、となっていきます。僕がやったのは、そういうたどり方でした(p122)

これを読んだ時、あ、この人は僕と全く同じ情報の辿り方をしているなあと思いました。興味があるものから派生してまた別のものに興味を持っていく。まるでWikipediaの項目を移ろいゆくかのように。例えば、僕が村上春樹が好きになったきっかけは「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」でしたが、これを読んでみようと思ったきっかけはアニメ版「CLANNAD」の「終わった世界」の描写が、村上春樹のこの小説をもとにしていると知ったから。その「CLANNAD」はもともとアニメ好きなのもあったのだけれど、周りの人がみんな良いと言っているからレンタルしてきて一気見した作品です(実際にとても良かった)。このように次から次へと連鎖的に興味の対象が移ろっていく様は、僕の感覚と全く同じでした。そしてそういうことを大切にしている人が僕以外にもいる、それを知れただけでも感動ものです。ますますこの本を好きになってしまいました。

 

kotooka.hatenablog.com

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)

 

 

及第点を取るやり方ではいけない

僕がこの本を読んでいて一番ドキッとしたのはこの部分でした。思考が似ているなあと思っていただけに、なんだか自分の弱みまで見透かされているなあという気になったところです。

はじめから自分を弱者に仕立てて、はなからスタートラインに立たない、だから大きな失敗もしない、そうしてとりあえず及第点を取るというのが僕の幸せなんですというやり方は、いちばんいけないことだと思っています(p98)

これを読んで自分のこれまでの生き方を振り返ってみると、なんと自分は及第点を目指す生き方をしてきたのだろうという暗澹たる気持ちになります。何事においてもそうです。なぜそうしてきたかというと、それが賢いやり方、言い方を変えれば「コスパのいい生き方」「効率的な生き方」だと思っていたからでもあります。しかし、効率的な生き方の行き着く先は、死でしかないわけです。何も新しいことには手を出さず、失敗しないように生きる、それが究極の効率的な生き方であると同時に、精神的な死を意味すると今ではわかります。僕が目指してきたものがそれではなかったはずです。おそらく、もっと精神的に充実した生き方だったはずです。ここにきて、自分の生き方の哲学を見直さないといけないなと強く思いました。

まとめ

興味本位で手に取った本でしたが、思っていた以上に収穫のある本でした。自分自身のこれまでの生き方を「振り返る」ひとつのきっかけになったと言っても過言ではないように思います。

おそらく僕は、これからもたまにこの本を開いて、自分の生き方を「振り返って」生きていくべきだろうなと思いました。それぐらいの本に出会えたと思っています。

(あと、センスも磨いていきたい)

 

センス入門

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